嵯峨天皇は南都六宗と北嶺(比叡山)の高僧、および空海の八人を宮中の清涼殿に召集、それぞれの宗旨の真髄を聴聞します。これは八宗論として伝えられています。
その場での各宗の高僧は、すべて成仏の経路は三劫成仏[さんごうじょうぶつ]といって、長い年月の修行を果たした後にはじめて成仏できるという未来成仏を説きます。
これに対し空海は一人「自心の源底を知るものは仏の心を知る。仏の心を知るものは衆生の心を知る。仏の生命を覚り、これと一体化して生きる肉体そのまま
で速やかに仏になることができる。それは仏の三密と人間の三業とが不二になる境地である」と真言宗の即身成仏を説き、一座の天皇と高僧たちの前で、手に印
契を結び、口に真言を唱え、心を仏の三昧に住するという三密行を示し、自身金剛身(大日如来)となり即身成仏の境地に入ってみせ、体から黄金の光を放ちま
す。
他宗の高僧たちはこの光景にすっかり畏敬し、天皇の空海への信頼は一層高まります。
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