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空海人形による物語空間からのメッセージ 和紙人形作家 内海 清美

 最後に登場された内海さんは和紙人形という特異な素材を駆使しながら、これまで平家物語や空海の大作に挑戦してこられました。 「物語空間」というべき作品群を通じて何らかのメッセージを現代社会に発信しようする内海人形は海外でもその評価は高く、来年はフランスでの展覧会が予定 されています。

 内海さんのお話は、だいたい次のようなものでした。

 私は東京生まれの東京育ちですが、四国とのご縁が不思議にありまして、例えば和紙もみんな四国のものですし、四国関係の方々とのお近づ きが多く、松岡さんとはじめてお会いした時に『空海の夢』をいただいたのもあり、私にとって弘法大師空海との出会いは風のようなものであり自然な流れでし た。

 テーマが大きくなればそれだけ勉強になるし、マンダラというのは現代のアーティストにとっても大きなテーマです。人形づくりがマンダ ラとはなかなか大変な動機なのですが、巨大な空海の世界に埋没するのではなく、まずは空海のことを知るために一代記を考えればいいのだと思った時、ふっー と気が楽になりました。3ケ月くらいは空海関係の資料や本を徹底的に読み漁りました。

写真2  3年がかりでしたが、最初は頭なら頭、足なら足、手なら手、と部分をどんどん作っていきます。その間も『三教指帰』とか『秘蔵宝鑰』とか『声字実相義』と か『即身成仏義』とか、いろいろな資料にあたったり本を読んで煮詰めて行きます。それで最後の半年で一気に装飾も含めて密度を上げて折りあげて行きまし た。

 私は空海人形の制作過程で「即身成仏」の「即身」というのは「創造(クリエイション)」なんだと実感しました。創作に没頭している時 煩悩の雲が払われたような心境になります。お坊さんの場合は祈りや修行による「即身成仏」であり、僕の場合は「即身和紙人形」の創作であって、いろいろな ことがひらめくんです。別な言い方をすれば「創造の最高の境地」と言ってもいいのではないかと思います。空海は「直観と創造の巨人」ではないでしょうか。 現実と非現実との間をしょっちゅう行ったり来たりできたのだと思います。それはまた「総合の集積」のなせるわざとも言えるでしょう。

 人形といえども実は「総合」芸術と言えまして、もともと彫刻でもあり工芸的でもあり絵画的でもあります。私は一人で創作するのですが、光や音や群像を使って「総合空間」が現出できたらいいと思っています。

 人形が白いというのは、説明空間ではなく言語空間(人形が言葉や文字である)であったり、21世紀へのメッセージであったりするのです。

 普通、造形は作者が意図したものを見る人が作品から感じるわけですが、私の場合は、私が作った人形とそれを見る人が直接会話をする、人 間の言葉と人形の言葉が交流する、そういう次元を狙っています。ですから、造形即言語なのです。『声字実相義』の「五大に響きあり」とか「六塵ことごとく 文字」という感覚がそうではないかと思います。

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