その夢枕さん、自分が書いているのは空海ワールドのようなもので、いつも空海的な発想とか空海的な感覚が後ろの方にあるのだそうです。その空海が唐(中国)から密教をみんなもってきてしまう話を書きつづけて十三年、まだまだ続くのだそうです。
夢枕さんに密教について聞くと、高野山の奥の院で指のない(たぶんその道の人)おじさんが般若心経を唱えながらボロボロと涙を流しているのを見た時の感 動が、夢枕さんの何かを揺り動かし、「俺みたいなダメな人間でも、そうかオレでもいいのか、といろいろ迷っていたものが吹っ切れた宗教体験みたいなもの」 を経験したそうです。
さらに、密教はセクシャルなことをふさがないでおおらかなところが信用できると、例の『理趣経』のことに触れておっしゃられました。ともかくこれからは空海に近い人たちが空海の凄さをもっと上手にアピールすべきではないかと、それが夢枕さんのメッセージでした。
私たちは夢枕さんの作品そのものの一字一句が、夢枕さんの想像力を通って出てくる如来の「声字」であり、その描くところが「法界の実相(真理・真実のすがた)」だと思えてきました。