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第五章 大瀧獄[だいりゅうだけ]

第五章・写真1  二十四歳で「三教指帰」を著してから三十一歳で遣唐船に乗るまでの七年間は謎とされ、歴史の表舞台から姿を消すことになります。

 南都仏教の衰退を目のあたりにした空海は山林修行者(山伏)の仲間に身を投じ、私度僧として、かれらの熟知する山相水脈の観相学ともいえる情報や、化学 者としての鉱物や薬草の分析、知識を体得し、「求聞持法[ぐもんじほう]」の教法を信じ、すでに大陸から移入されていたエネルギーに満ちた雑部密教も取り 入れ、山野を跋渉[ばっしょう]しながら熱心に修行します。

 あるとき阿波国の大瀧嶽では空海のとなえる真言に谷々は呼応し、響きを惜しまなかったといい、心身の修練からくるさまざまな神秘体験を積みます。


第五章・写真2 ◎ある時は龍を降伏[ごうぶく]することによって天の神と通じ、またある時は山伏と交信し水銀の鉱脈をさぐりあて地の祇[かみ]と観じ合います。

◎またある時は、男を失い女だけが取り残された村を救います。

◎真の仏教、真におのれが生きる教えは何かを求め、山で海で難行苦行をくり返し、冬の大雪の降る中を葛の下着だけで歩行し、夏の猛暑には 穀粒の食事を断ち、朝夕の懺悔の生活を送り、自己の内で深く生きる道を問い、その行きづまりから絶望し、三度の自殺を試みたという伝説もあります。

◎龍を降伏するということは水神である龍の力を自由に制御することで、降雨法を修めたことになり、また風水学も修めた象徴になるでしょう。

空海はその龍に乗り、宇宙と交信し、宇宙的視野を感得し行動した、世界で最初の宇宙飛行士ということにもなりましょう。

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