当フォーラムの新活動である「空海賞」の第1回贈呈式ならびに記念講演が、去る5月25日、東京目白のホテル椿山荘東京で行われ、会場満席のなか松岡正剛氏(編集工学研究所所長、『空海の夢』著者)に大賞が、蓮花寺佛教研究所(東京大田区、主宰:遠藤祐純大正大学名誉教授)に学術奨励賞が、全真言国際救援機構(ASIRA、代表:横浜真照寺住職水谷栄寛師)に国際貢献賞が贈られ、続いて大賞を受賞した松岡正剛氏が「再来、空海の夢」と題し、自著『空海の夢』の各章について新しい角度も交えて記念講演を行いました。
会場案内
総合司会の山口正純師
上村正剛会長あいさつ
受賞者/左から松岡正剛氏・
遠藤祐純先生・番場雅文師
満席の会場
各界各層の出席者
受賞者スピーチに耳をかたむける
歌人岡野弘彦先生(皇室和歌指南・
國學院大学名誉教授)も
全真言国際救援機構(ASIRA)へ
「国際貢献賞」
ASIRAを代表して
番場雅文師の受賞スピーチ
蓮花寺佛教研究所へ「学術奨励賞」
受賞スピーチの蓮花寺佛教研究所
主宰・遠藤祐純先生
松岡正剛氏へ第1回「大賞」
各受賞者へ花束贈呈
受賞スピーチの松岡正剛氏
記念講演「再来、空海の夢」
21世紀こそ空海密教の方法、と
この「空海賞」は、弘法大師空海上人の
をヒントに、
の分野におきまして、顕著な業績を残されたり、地道に活動をしておられる人や団体に敬意を表し、僭越ながらこれを顕彰しあるいは励ます意味において、毎年一回、その贈呈式を行うこととさせていただいたものであります。
こうした顕彰活動は本来、私どものような有志の任意団体ではなく、然るべき権威を有する団体によって行われることがふさわしいと承知しておりますが、設立以来20年の活動がいささか現代社会の多くの人の目に止り、弘法大師空海上人の密教世界に学ぼうとする篤学士各位に少なからずお役に立ってきた自負もあり、敢えて着手した次第であります。
思えば約20年前、日本社会を震撼させたカルト・オウム真理教事件の折、「密教」という言葉とともにチベット語の「ポア」(「死ぬ」「転生」といった意味)をよく耳にしました。幹部信者は殺人(「ポア」)容認の教義的根拠が「密教」だとうそぶきました。「密教」とは、実際は弘法大師空海の「正統密教」とは異なる仏教史最後期の「タントラ仏教」=「金剛乗」(タントラヴァジュラヤーナ)のことでしたが、メディア情報は錯綜し弘法大師の「正統密教」までがテロを容認しているなどと誤解されました。然るに、真言宗系の宗派はこれに沈黙し、おくればせながら批判的なコメントを表明したのはわずかに真言宗智山派だけでした。その時の同派宗務総長が私どもの上村会長であります。
密教の専門家であるはずの真言僧が口閉ざしていていいのか、やむにやまれぬ気持から230人の有志が集まり「密教21フォーラム」を結成し、正しい密教とは弘法大師が中国(唐)で受法し独自に日本的展開をした「空海密教」であることを、わかりやすく社会情報化することからはじめたのであります。
折しも、松岡正剛さんの『空海の夢』(第2版)が公刊された時期でした。私どもはこの本に啓蒙され刺激され、松岡さんに設立総会の記念講演をお願いしたものであります。それから約20年、松岡さんの智慧と編集工学研究所の先進的情報工学の協力を得て、「母なる空海」を主テーマに専ら社会に伝染した「密教」の汚名を名誉回復するため、社会情報活動をしてまいりました。私どもの公式サイト「エンサイクロメディア空海」は、日本仏教の祖師専門サイトとして他に類を見ない、質量ともに豊かなコンテンツを誇り、グーグル・ヤフーで「空海」を検索しますと常にトップ5にあります。
気がつけば私たちも老齢に達しました。これまでの道のりでお世話になった方に感謝の誠を捧げる一方、これからは後進を励まし後援し、また地道に大師道を励んでおられる人や団体にも目を向け、ささやかながらそれらの人たちに拍手を送る活動に足跡を残していきたいと考えております。
●贈呈式・記念講演
- 開会のことば
- 会長あいさつ
- 受賞者紹介
- 贈呈式
①国際貢献賞 全真言国際救援機構
○顕彰トロフィー
○副賞賞金目録
○花束
○受賞あいさつ
②学術奨励賞 蓮花寺佛教研究所
○顕彰トロフィー
○副賞賞金目録
○花束
○受賞あいさつ
③大賞 松岡正剛氏
○顕彰トロフィー
○副賞賞金目録
○花束
○受賞あいさつ - 閉会のことば
●記念講演
●受賞者
1944年、京都市生まれ。1971年工作舎設立、総合雑誌『遊』を創刊。1982年よりフリーランスとなり松岡正剛事務所設立。1987年編集工学研究所を設立。以降、情報文化と日本文化を重ねる研究開発プロジェクトに従事。2000年にインターネット上に「イシス編集学校」を開校するとともに、ブックナビゲーション「千夜千冊」の連載を開始、現在も更新中。
1984年、春秋社より上梓した『空海の夢』が話題となり、1986年には毎日新聞社・高野山大学主催「マンダラ・パラダイム」をモデレート。1998年から「密教21フォーラム」とともにトークイベントや映像ソフト『蘇る空海』制作など、空海密教をマルチメディアライクに紹介する「空海プロジェクト」を手掛ける。
主な著書は、『知の編集工学』『知の編集術』『17歳のための世界と日本の見方』『日本流』『日本数寄』『山水思想』『日本という方法』『ルナティックス』『フラジャイル』『松岡正剛千夜千冊』(全7巻)『連塾―方法日本』(全3巻)『にほんとニッポン』『国家と「私」の行方』ほか多数。
【連絡先】
松岡正剛事務所
〒156-0044 世田谷区赤堤2-15-3 TEL:03-5301-2212
【ホームページおよび関連サイト】
「セイゴオちゃんねる」
「松岡正剛の千夜千冊」
「イシス編集学校」
松岡さんが40才の時に書かれたという『空海の夢』は、古来多くの宗教者・思想家・哲学者が関心を示さなかった難解な空海密教の内奥に、卓越した博識を以て正面から果敢に迫った秀逸かつ明快な空海密教論であり、この一冊によってはじめて空海密教は真言宗の教理・教学の枠を越え、近代仏教学の方法を超え、世界思想のレベルに位置づけられたのであります。
私たちはこの名著により、空海密教を読み解くには、日本古代史、アジアの古代史、古代宗教、インド仏教史(とくに大乗仏教思想史)、ヒンドゥイズム、インド哲学、中国仏教史、儒家の思想、道家(老荘)の思想、道教・道術・神仙思想、中国の史書、五明の学、漢詩文、書芸、梵字・悉曇(サンスクリット)、言語哲学をはじめとする西洋の哲学・宗教・思想・諸科学に通じ、さらに言えば昨今のデジタル技術文明まで理解しているべきであり、単に生半可な 仏教学や伝統教学だけでは空海密教には歯が立たない現実を知らされました。私たちはこの現実から教えられたのでした。
この本の公刊を期に、空海を語る松岡さんに多くの耳目が集まり、テレビ・新聞・雑誌・講演等を通じて真言宗の内部や大師信仰の内に閉ざされていた空海密教が、社会のさまざまな分野で先端を行く人たちの知性や方法に大きな刺激を与え、現代に蘇ったのであります。のちに私たちが主張した「蘇る空海」は、まさにここから発していました。
私たちのフォーラムが今日まで歩んでこられましたのは、一にかかって松岡さんの寛容な人柄と誰もが驚嘆する博識のおかげであります。現代日本を代表する「知の巨人」でありながら、私たちには常に真摯かつ謙虚で時にユーモラスでした。この極上の恩人に、第1回「空海賞」大賞を贈呈できますことは私たちにとりまして無上の歓びであります。
蓮花寺は真言宗に属する小寺院です。2006年に開設した蓮花寺佛教研究所は小規模なものですが、ここに集う研究者たちは、仏教の基礎研究から今日的課題について、互いに自由に論を交わし、研究を広め、深めております。
現在、在籍する9名の研究員は、専門分野も幅広く、歴史学、宗教学、文学、思想史、経営学等、多様な人材が集まっております。仏教が様々な時代、地域の中で、どのように人間の社会や文化を形成してきたのか、あるいはその中でどのような変容を遂げてきたのかという研究課題に、それぞれの専門分野から取り組んでおります。
蓮花寺佛教研究所では、毎月1度、外部からの研究協力者を交え、研究会を開催しています。研究会はオープンで、誰でも参加することができます。毎回2名が研究発表を担当し、参加者全員で討論、批判を重ね、研鑽をしています。その成果は、年1回発行の『蓮花寺仏教研究所紀要』として刊行されています。昨年度号で『蓮花寺仏教研究所紀要』は第10号目を迎えました。
研究紀要の交換等を通して、国内外の研究機関と交流をはかっており、2012年には台湾仏光山の招待を受け、研究員有志で交流訪問をいたしました。
また2013年度からは新事業として、龍虎山能滿寺の助成を受け、人文研究に従事する優れた若手研究者の支援を始めました。この研究助成は、アジアの宗教、思想、文化を研究する優れた若手研究者を支援するとともに、学際的な研究の輪を広げていくことを目的としています。これまでに3名の若手研究者が研究助成を受けました。
なお、研究会の案内や最新号を除く『蓮花寺仏教研究所紀要』のバックナンバーは、研究所のホームページ(http://renbutsuken.org/wp/)で閲覧することができます。
2017年度人員構成
代表 | 遠藤祐純(大正大学名誉教授) 密教学 |
研究員 | 伊藤尚徳 中国仏教、日本仏教 今井秀和 近世・近代・現代日本文化、日本文学 遠藤純一郎 中国思想、日本思想 大道晴香 宗教学 小嶋教寛 日本中世史 小林崇仁 日本古代史、日本仏教 高橋秀城 日本中世文学 松本圭介 経営学 山野千恵子 インド学、仏教学 |
この研究所を主宰されている蓮花寺(東京都大田区)住職の遠藤祐純先生(大正大学名誉教授)は、日本の密教学界を代表する研究者で、とくに密教経典では最も難解といわれる『金剛頂経』のサンスクリット原典・チベット語訳・漢訳の比較対照研究を基にした『金剛頂経』研究の第一人者で、数々の学績を残されております。その遠藤先生の学風やご指導を慕う若き学匠が集り、蓮花寺敷地内の一角で日々研鑚に励んでおられるのが蓮花寺佛教研究所であります。
仏教研究に勤しむ篤学の士の難問は、昔も今も研究費や書籍代に不足を感じることであり、そのため折角恵まれた才能をもちながら学術の志を断念する人も少なくありません。若き研究者を育成する指導者は常にこの点との葛藤を余儀なくされております。
蓮花寺佛教研究所は専ら、遠藤先生のご配慮ご指導と若き学匠の自立自助のご努力によって成り立っており、この真言宗内でも特異かつ真摯な取組みに私たちは心打たれるものがあります。
このたび、第1回「空海賞」学術奨励賞に選ばせていただきましたのは、遠藤先生のご労苦へのささやかな支援と若き学匠への励ましの趣旨からであります。
弘法大師の済世利人・衆生済度のご誓願を国際貢献を通してASIRAは実現していきます。弘法大師の御心を、今の世に【設立目的】
弘法大師の法灯を今の世に受け継ぐ多くの方々を迎え、御心を現代に生かすための浄行の一つとして、衆生利益の具体的な実践を目的に、全真言国際救援機構が設立されました。
本会は仏教NGOとして、国内外での弱い立場の人々や社会へ、組織的な救援活動の促進を通して福祉向上のために貢献をし、大師への報恩謝徳の行としております。
国内・海外での支援事業【支援事業】
国内外の災害救援活動を行います。自然の猛威にさらされた方が、生きる勇気や充実感を得られる様、仏弟子としての本然に立ち返り、心のケアを中心とした支援活動を行っていきます。海外での事業は、主にアジアの仏教国を対象に、支援国の伝統と文化を尊重しつつ、福祉、教育分野などでの支援活動を長期的な視野において行っていきます。
真言各派の壁を超えた組織づくり【組織運営】
本会は真言各派の壁を超えた組織づくりを図り、各位の積極的な理事へのご参画を仰いで、ASIRA発展のための組織運営に、一歩一歩推進をしていきます。
入会のご案内
全真言国際救援機構【ASIRA】は新たな仏教NGOとして発足しました。地球上の生ある全てのものが、共生、共存がはかれる平和な社会になることを願っております。豊かな日本とは対照的に、私たちの同胞で仏教国の東南アジア諸国では、絶対的な貧困に苦しむ人々が、支援の手を待ち望んでおります。恵まれぬ人々への福祉、自立への支援を、皆様のお力添えによって実践し、実りあるものにしたいと思います。会員には、活動方針を決定する総会での議決権があります。また、理事への自薦や海外活動への参加などが可能となっております。
全真言国際救援機構(ASIRA)は、弘法大師空海上人の済世利人・衆生済度のご誓願を国際貢献を通して実現していく真言僧のNGOであります。
弘法大師は、31才で唐に渡り、その特異な才能が認められ短期間で当時最も新しい仏教だった『大日経』系・『金剛頂経』系の密教を受法して真言伝持の第八祖となり、留学先の長安ではさまざまな分野の文人墨客と交流して帰国しました。わが国の国際交流の先駆者であり、唐語とともにインドのサンスクリットもマスターしていた国際人でした。
一方また、弘法大師は朝鮮半島からきた帰化人・秦氏の先進的な潅漑土木の技術を知っていて、故郷の満濃池や大和の益田池の修築を指導し、請われて大輪田の泊(現神戸港)の修築監督を務め、あるいはまたわが国初の私立学校「綜藝種智院」を創設し、庶民の子弟のために仏教と学芸を教えました。
全真言国際救援機構(ASIRA)はこれを範とし、仏教国カンボジアに「小満濃池」を掘り、学校をつくり、チベット難民のために絵本を贈り、タイとの仏教交流に実績を積んでまいりました。とくにチベットのダライ・ラマ法王の信頼は厚く、平成18年10月には当フォーラムと共催で、東京高輪プリンスホテル国際会議場「パミール」におきまして、法王の東京講演を行いました。
この稀有な国際貢献活動も自立自助の活動にて、その運営はなかなか容易ならざるものがあり、今回の第1回「空海賞」国際貢献賞がささやかながら激励の一つになれば幸いと考えた次第であります。